大阪の社会保険労務士、村田社会保険労務士事務所による労務管理情報

なかなか進まない企業による「外国人雇用状況」の届出

改正法の施行から1年が経過

外国人労働者の雇用改善等を目指した「改正雇用対策法」の施行から1年が経過しました。外国人の就労実態を把握しようと、企業に外国人労働者の雇用状況(就職・離職)の届出が義務付けられましたが、煩雑さなどを理由にあまり浸透していないのが現状です。新制度が外国人の雇用改善や不法就労防止に結びつくのか、早くも実効性が問われ始めています。

 

3割強の低い補足率

厚生労働省は9月上旬、新制度になって初めて、全国のハローワークが受理した外国人雇用の届出状況(6月末時点)を公表しました。直接雇用している外国人労働者数は全国で33万8,813人と、任意提出だった2007年に比べて約4割増えたとみられています。出身国別では中国が44.2%(約15万人)でトップ、次いでブラジルの20.9%、フィリピンの8.3%となっています。

改正雇用対策法施行(2007年10月1日)までの雇用に関しては今年10月1日までが届出猶予期間であり、発表された数字は途中集計のもので、まだ届出されていない人数は、かなり多いものと思われます。法務省入国管理局や厚生労働省のデータなどから推計すると、外国人労働者数は約100万人とも言われており、仮に100万人とすれば捕捉率は3割強にすぎません。

 

企業の対応に温度差

一部の外国人労働者は、不法な低賃金で、劣悪な環境の下で働いていると指摘されています。改正雇用対策法のねらいは、事業主に雇用条件の改善を促すとともに、雇用状況の届出を法的に義務付けて、把握した数値などを今後の施策に活用していくことです。

ただ、企業の対応には温度差があり、厚生労働省では届出が進まないことに頭を悩ませている状況です。各企業からは、「届出を義務付けたことで現場の作業が煩雑になった」という声があがっています。国も現場の負担を軽減するよう取り組んではいますが、届出には外国人の氏名や在留期限、在留資格などの記入が必要で、実際には事業主の負担が大きいと言わざるを得ません。

 

不法就労防止・再就職支援に向けて

国は事業主からの届出を活用して、不法就労の防止や離職した外国人の再就職支援などを図りたい考えです。しかし、企業の対応がばらついたまま届出数が伸びなければ、適切な対策を打ち出せないおそれもあります。不法就労などの問題があるケースほど届出しにくいという側面もあり、厳格に提出を義務付けることが必要である半面、事業主の協力が得られない中での中途半端な対策は、外国人への真の就職支援につながらないのではないでしょうか。

今後の届出の進捗状況を見極めたうえで、届出制度とその内容について具体的な見直しが必要になるかもしれません。

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